ゲームバランスを確かめるため、ウラギリ・シグナルをBot同士で自動進行できるシミュレーターを作りました。同じ条件の試合を多数実行し、勝敗だけでなく、選んだ行動やルートの進み方も記録するためです。

最初に単純なBASICイッパンジンBotで1000試合ずつ実行したところ、イッパンジン勝率は約13%でした。数字だけなら「20手に増やしてもウラギリモノが圧倒的に強い」と見えます。しかし、結論を出す前にBotの行動を調べると、ルールとは別の問題が見つかりました。

最初の1000試合で出た数字

通常条件のNORMALでは、イッパンジンが12.60%、ウラギリモノが87.40%でした。誰がウラギリモノかをBot側が知っている「ウラギリモノ既知条件」でも、イッパンジンが12.90%、ウラギリモノが87.10%です。

  • NORMAL / BASICイッパンジンBot: イッパンジン 12.60%、ウラギリモノ 87.40%
  • ウラギリモノ既知条件 / BASICイッパンジンBot: イッパンジン 12.90%、ウラギリモノ 87.10%

ウラギリモノを知っていてもイッパンジンの勝率がほとんど変わりません。正体を知ることが復旧へ結びついていないなら、妨害の強さだけを原因にするのは早すぎます。

記録を確認すると、BASICイッパンジンBotはCONNECTを選ぶ割合が高く、BOOSTを使っていませんでした。目の前のセルを進めることはできても、完成に近いルートを優先する判断が弱く、必要なREPAIRやSCANも十分に生かせていません。SWITCHの使い方にも無駄があり、20手の中で3ルートを完成させる効率が低いBotでした。

ゲームではなく、まずBotを直す

この段階でJAMを弱くしたり、さらに行動数を増やしたりすると、弱いBotに合わせてゲームルールを変えることになります。そこでルールには触れず、イッパンジンBotの方針だけをSMART化しました。

SMARTイッパンジンBotは、公開された障害が進行を止めているときにREPAIRを優先します。複数のルートから選べる場合は、完成に近いルートや次の有効な行動につながるルートを評価します。BOOSTが実際に進行を増やせる場面では候補に含め、意味の薄いSWITCHを避けます。SCANで得られる情報も、その後の選択に使います。

高度な推理AIを作ったわけではありません。盤面に見えている情報から、ゲームの目的に沿った合法行動を選ぶようにしただけです。それでも、結果は大きく変わりました。

SMARTイッパンジンBotで再度1000試合

SMARTイッパンジンBotを使ったNORMALでは、イッパンジンが59.90%、ウラギリモノが40.10%でした。ウラギリモノ既知条件では、イッパンジンが61.70%、ウラギリモノが38.30%です。

  • NORMAL / SMARTイッパンジンBot: イッパンジン 59.90%、ウラギリモノ 40.10%
  • ウラギリモノ既知条件 / SMARTイッパンジンBot: イッパンジン 61.70%、ウラギリモノ 38.30%

BASICイッパンジンBotからSMARTイッパンジンBotへ変えただけで、イッパンジン勝率は12.60%から59.90%へ動きました。ウラギリモノ既知条件でも12.90%から61.70%です。ゲームルールは同じままなので、この差の多くはテスト役の意思決定によって生まれています。

ここで得られたのは「イッパンジン勝率は必ず約60%になる」という結論ではありません。簡易Botが目的に沿って動けるようになると、少なくとも一方的な結果ではなくなった、という確認です。どの行動を評価するかによって結果が変わるため、SMARTイッパンジンBotにも別の偏りが残っている可能性があります。

シミュレーションは測定器でもある

シミュレーション結果が悪いと、ゲームルールの数字をすぐ変えたくなります。しかし、測っているBot自身が弱ければ、ルールを誤って評価します。勝率を見る前に、そのBotがゲームをきちんと遊べているかを確かめる必要があります。

自動試合は、境界条件を繰り返し確認したり、行動構成の偏りを見つけたりするのに役立ちます。一方で、人間4人の会話、疑い、勘違い、駆け引きを再現するものではありません。今回の数字も簡易Bot同士の比較であり、人間の実プレイにそのまま当てはめることはできません。

今後も勝率だけを目標にせず、ルート完成効率、REPAIRやBOOSTの使用状況、試合がどこで止まるかを合わせて見ます。そのうえで人間が遊んだときの判断や会話と比べ、ルールを変えるべきか、説明やUIを直すべきかを分けて考えます。

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